No.171 介護士による経管栄養は、違法に当たるのか否か。
自らの力で食べ物や飲み物を摂取することが困難な方に対し、栄養物を直接体内へと送り込む経管栄養。これは医療的措置に相当します。では介護士など、医療とは他分野の資格を所持している人がそのような措置を実施する場合、違法と見なされてしまうのでしょうか。確認していきたいと思います。
違法にならないための条件
結論から申し上げれば、たとえ医療従事者に該当しない介護従事者であっても、定められた条件を満たしてさえいれば、経管栄養への対応に関して違法とされることはありません。
かつては、経管栄養は医療資格を持つ方にしか認められない処置でした。しかし2012年に従来の社会福祉法ならびに介護福祉法が一部改正となり、介護職の方でも着手できる条件が定められたわけです。
医療系職種以外の方が経管栄養を行うための必要条件は、以下の3つです。
- 1. 措置を行う職員が、喀痰吸引等研修(第1~3号いずれか)を修了していること。
- 2. 措置を行う職員が、認定特定行為業務従事者の認定証を取得していること。
- 3. 実施する職員の勤務先が、登録事業者として登録済みであること。
上記1~3をまとめて言い表すならば、喀痰吸引等研修修了によって経管栄養実施の技能を習得した方と、その勤務先である事業所それぞれが、実施する許可を行政から得ていることが必要、ということになります。
喀痰吸引等研修とは
自力で食事が摂れない方への栄養補給と、たんなど呼吸器官のつまりを除去する措置を、主に介護従事者の方が習得するべく設けられた資格です。
介護職においては、国家資格である上位の介護士を取得したとしても、それだけでは経管栄養および喀痰の除去に着手することは、法的に認められません。これら業務に従事される方は、介護系の資格にプラスして、別途この医療行為に関する研修履修も必要となるわけです。
喀痰吸引等研修は、第1号、第2号、第3号という3つの種類に分けられ、それぞれで処置可能な対象者や可能となる処置方法が異なります。
第1号においては、不特定多数の対象者に処置を行うことが認められています。実行可能な処置内容は、喀痰吸引においては、口腔・鼻腔・気管カニューレ内における実施、経管栄養に関しては、胃ろう・腸ろう・経鼻による実施となります。
第2号は、不特定多数に実施可能という点では第1号と同様です。しかしながら、処置内容においては第1号と比較して幾分制限されることとなります。具体的には、喀痰吸引においては口腔および鼻腔、経管栄養では胃ろうまたは腸ろうによる処置が可能となるわけです。
第3号では、特定の身体状況にある方への措置が対象となります。経管栄養における対象者は、筋委縮性側索硬化症ないしそれに類似した神経疾患、筋ジストロフィー、高位頚髄損傷、遷延性意識障害、重症心身障害などを患っている方です。実行可能な処置内容に関しては、喀痰吸引と経管栄養ともに第1号の規定と同様となります。
- ■まとめ
- 以上のように、かつては医療従事者にしか認められていなかった経管栄養ですが、現在(2022年7月時点)では必要な条件を経ることで介護従事者でも行えるよう、法整備がなされています。利用者の方々に安心して処置を受けていただく上で、ルールに則った実施体制を取ることが肝要です。