No.163 介護士の声かけ 障害別の基本ポイント
介護の現場において利用者との信頼関係をつくる上で、声かけはとても重要になります。基本となるポイントは、ゆっくり、はっきりを心がける事です。今回は障害のタイプに合わせた介護士の声かけについて、掘り下げて見ていきましょう。
認知症の方へのポイント
認知症の方は、障害の程度によって症状が大きく変わります。例えば軽度の方であれば、物の名前や人の名前が出て来なかったり、数分前の出来事が思い出せなかったり、逆に同じ話を繰り返すなどの症状が現れます。
これが中等度になると68%はアルツハイマー病にかかり、家族や友人を認識しにくくなる、幻覚や妄想が起こる、他人の言う事の理解が難しくなる特徴があり、重度では完全に言葉を話せなくなったり、運動機能に支障をきたしたり、介護を拒否するなどの症状が見られます。
それらを踏まえて、声かけの重要なポイントはいくつか有りますので、下記を参考にしていきましょう。
- 1.笑顔でゆっくりとした声かけで問いかける。
- 2.ここはどこで、自分が誰なのか、どうして話しかけているのかを伝える。
- 3.何に対して不安や不満を思っているのか聞いて、その気持ちに対して寄り添う。
- 4.相手が言葉を発しなくても感情は伝わると考えて、笑顔で丁寧に声かけをする。
- 5.手を握る、背中をさするなどをしてスキンシップを取りながら安心感を与える。
言語障害の方へのポイント
脳出血や脳梗塞の後遺症は言語障害で失語症の方が多くおられます。言語障害(言葉が出ない、呂律が回らない)には2つの症状に分けられます。失語症と、構音障害です。失語症は会話のキャッチボールが上手くいかないなどの状態がみられます。構音障害は、会話の内容は正しいが、口唇や舌の運動麻痺によって、呂律が回らないなどの症状がみられます。
そのためコミュニケーションが取りづらく、スムーズに介護が出来ないこともあるでしょう。そこで、言語障害(失語症や構音障害)の方とのコミュニケーションのコツをお伝えします。
- 1.「お話してもいいですか?」と確認してから話を始める
- 2.返答しやすい質問や、選択肢で伝える方法を取る
- 3.よく知っている言葉を使う
- 4.話題を混合させない
- 5.メモを活用する
- 6.代弁はしない
視覚障害者の方への声かけ
正面から気配を感じ取ってもらってから、話すことがポイントになります。それは、視覚障害の方にいきなり話しかける事は、私たちが後ろから驚かされたような衝撃に匹敵するからです。
また、話す内容は具体的に分かりやすく伝える必要があります。例えば、「右手側に5メートル進むとトイレがあります」という風にイメージしやすい数字などを使うことです。決して「あれ」「それ」などの指示語は使用しないように気を付けましょう。
誘導する時にも、いきなり手に触れる身体に触れるのはタブーになります。事前に声かけをする事が重要です。例えば「これから案内しますので、右手をお借りします。」などの声かけを行いましょう。
お手伝いする方法が分からない場合は、本人に聞いてみるのも良いです。「何かお手伝いできることはありますか?」「もしよろしければ、案内しましょうか?」と相手に選択できるような声かけを意識しましょう。
- ■まとめ
- 声かけの基本はゆっくり、はっきりを心がけることですが、障害に合わせた声かけをする為には、障害を理解する事から始まります。信頼性をもってもらい、安心感を与えるような声かけをしていきましょう。