No.61 高齢者介護から考える尊厳とは?
みなさんは「尊厳」という言葉の意味をご存知でしょうか?介護保険法の総則では、「加齢に伴って介護が必要になった時、要介護者の尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付をおこなう」と条文中に明記されています。では、要介護者及び高齢者の尊厳とは、何なのか考えてみましょう。
介護現場での尊厳について考える
尊厳とは、個人の人権を守ることに大きくかかわってきます。例えば
○利用者に対して声かけする際「赤ちゃん言葉」で話していませんか?
認知症利用者に対して、どうせ何も理解ができないからと思っても名前で呼ぶように心がけましょう。
○利用者に対して、「上から目線」「ため口」を使っていませんか?
話をする時や声かけをする時は、できるだけ敬語や利用者より低い視線・姿勢を心がけましょう。
○介助をする際、利用者のプライバシーに十分に配慮していますか?
排泄介助や入浴介助・居室での着替えの際、他の利用者から見えないような配慮を心がけましょう。
○安易な理由で身体拘束をしていませんか?
【身体拘束がやむを得ず許される理由】
①利用者本人や他の利用者などに対して危害を加える恐れがある場合
②身体拘束や他の行動制限がない場合
③身体拘束が一時的なもの
3つの理由のすべてが前提であり、「身体拘束廃止委員会」で検討する必要があるため、確認と記録をしなければいけません。
施設介護で経験した利用者の尊厳について
私が10数年勤めた介護老人保健施設に、顔見知りでよく知っているクリニックの80代のA先生が入所して来ました。その先生は多少の認知症があり、挨拶し自己紹介をしたのですが、私のことを覚えていませんでした。それでも私の方は、幼少のころから先生のことをよく知っているので、会話をする時に話に事欠くことはありませんでした。
私は、長年介護福祉士として勤めていましたので、他の介護士にもAさんを〇〇先生と呼んだ方が良いと指導していましたが、ある時、一人の介護士が何気なく〇〇さんと呼んだ時に不機嫌な顔をして返答してくれないことがありました。そのA先生にとって何十年も地域のみなさんから「先生」と呼ばれてきていて尊敬されていたので、プライドが傷ついたことでしょう。
利用者1人ひとりに対して、尊厳を持って介護をすることの大切さを再確認できた出来事でした。
- ■まとめ
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高齢になっても、その人らしく尊厳を持って施設や自宅で自立した日常生活が送れるように支援や介助をすることが大切でしょう。たとえ、認知症や寝たきりになっても、個人の尊厳やプライドを守りながら、その人に合わせた介護していくことが重要です。