No.60 介護施設での担当者会議はなぜ必要? 事例を通しての体験談
担当者会議とは、一般的にはケアマネが中心となり、利用者やその家族・担当者に関わるサービス機関や専門職で、サービス利用者の課題について話し合われるサービス担当者会議を指しますが、介護現場での担当者会議とは、一体どのような場合に行われるのか考察してみました。
担当者会議はどんな時に行うの?
担当者会議は利用者に問題があった場合に対して、改善策を見つけるために行われますが、業務内容に課題がある場合や多職種の連携が取れていない場合などに、行われるケースが多くあります。介護職のみで行う場合や他職種を交えて行うもの、施設全体で行うものまで様々です。
利用者の願いを叶えるための担当者会議の事例(体験談)
担当者会議を通してある利用者さんの希望を叶えた事例を紹介します。
利用者Aさんは施設を利用していて寝たきり状態、リクライニング車いすを使用していますが、意思の疎通は良好でした。長年一人暮らしであったため、現在自宅には誰も住んでいない状況でした。隣町に住む息子さんが、時々自宅を訪問して管理をしているようでした。
Aさんは、施設に入所してからスタッフに対して「自宅がどうなっているのか心配」だという理由から、外出したいということをよく話されていました。しかし、施設から自宅までは往復1時間余りかかり、車での移動にはAさんの健康状態も気になりました。しかし、その訴えは日増しに強くなり、時々不穏になることもあった健康状態も安定してきたので、1時間余りの外出は可能との判断で、Aさんの個別の担当者会議を看護師や相談員・介護士・ケアマネなどが参加して行われました。
まず、どの様な問題点があるのかを拾い出して、その解決策について意見が活発に議論されて以下のことが決まりました。
○外出当日のAさんの健康状態をよくチェックして、看護師・介護福祉士の2名が同行する。
○時間は、午前中入浴して昼食を摂ってから、比較的スタッフの人数が多い午後から出発する。
○自宅への車移動中、少しでも体調に変化が見られたら直ぐに帰所すること。
出発当日、Aさんのバイタルチェックをして状態も良いので、午後から外出することができました。自宅に着くと、息子さんが待っていて、車いすで自宅に入ることができました。
自宅の中を見渡して安心したのかAさんは、終始笑顔で「元気のうちにお家に来ることが出来て良かった」と言いながら、「看護師さん、介護士さん本当にありがとう」と何度も何度もお礼を言っていました。その言葉を聞いた時に、「これまで介護の仕事をしていて本当に良かった」と感激したのを今でも鮮明に覚えています。
介護の現場は、人手不足で業務にゆとりがないのが現状です。それでも利用者個人の希望を叶えるために、介護士ばかりではなく他職間のスタッフが協力して情報共有して担当者会議を持つことで、スタッフが色々な知恵を出し合いAさんの外出に繋がりました。
これは、ほんの一例ですが、利用者の中には施設側に遠慮して、自分の本音や希望を言えない方も多くいると思います。利用者の一番身近な存在の介護士が些細なことを見逃さずに、介護現場で担当者会議をすることにより、一人でも多くの利用者さんの希望を叶えることも介護士の大事な仕事だと思います。
- ■まとめ
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介護業界に限らず、どの企業でも日常的に様々な会議が行われていますが、何か問題があった場合に課題解決の手段として行われますが、担当者会議もまた同じ目的で行われます。介護現場でも課題は山積みしていることでしょうが、スタッフ全員が改善に向けた意見を出し合い、日々のケアでモチベーションを上げていくため担当者会議は重要となってくることでしょう。