No.6 認知症への尊厳意識は良質な介護の出発点
社会全体が高齢者の尊厳についての考えが浸透してきたのは、つい20年から30年程前からのことです。以前は、認知症に対する知識や考えがそれほどなく、認知症になったら「何も分からなくなってしまう」「徘徊などが多くなる」といった安易な見方をしていたものです。ここ数年で認知症に対しての症状などの対応や見方・考え方が変わってきました。今回は、認知症になった高齢者の尊厳について解説していきましょう。
認知症とは?
認知症の症状には、「中核症状」と呼ばれるものと「BPSD」と呼ばれるものがあります。
- ◎中核症状とは
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①記憶障害
直前に起きたことを忘れる障害です。
②判断力の障害
思考が低下することで判断ができない判断力の障害、いろんなことに対処できなくなる問題解決能力の障害や、計画的にものごとを実行できなくなる実行機能障害などがあります。
③見当識障害
ここがどこか、いつなのか、季節などが分からなくなる症状です。
- ◎認知症になると出てくる症状(BPSD)とは?
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①徘徊
②せん妄
③妄想
④幻覚
⑤昼夜逆転
⑥不眠
⑦抑うつ
⑧興奮
⑨暴言や暴力
⑩ろうべん
⑪失禁
⑫もの取られ妄想
ここで問題となってくるのは、中核症状よりも「BPSD」でしょう。
そのような様々な症状は個人差があり、また、症状の度合いも人によって違うので、周りの人間関係にも影響を与え、特にその家族にとっては、対応に苦慮することが多いでしょう。介護職員でも専門の認知症研修をうけた方でも難しい課題でしょう。
認知症になってもできることがある
たとえ認知症になっても専門的研修をうけた介護職員が、適切な援助をうけながら生活を送っていけるように支援体制を整えることが大切です。
認知症になってもできることは、たくさんあります。時に、介護者は、何でも介助しがちですが、利用者ができることを見つけて支援していくことが「生きがい」に繋がりますので重要なことです。
利用者を孤立させないために他職間の連携が必要
認知症状にだけ目をやるのではなく、これまでの生活歴や本質的に持っている良い面にもしっかり目をやり、その方が必要な介助をしながら医療、介護、福祉、地域、家族とも良く連携を取っていくことが大切です。
認知症利用者の尊厳を守る
介護保険法で認知症利用者の人権と尊厳を守ることを明記して長くなりますが、いまだ、その法律が守られていない施設があるのもまた事実です。
例えば医療現場や介護現場では、暴れたり徘徊したりする利用者に安易に身体拘束をしたり心無い職員の虐待があったり、認知症高齢者に対する人権無視や尊厳を軽視したことが行われています。
今後、高齢化が進行していく中でこのような事例がなくなるように、法制度の厳格化や医療施設や介護施設職員の研修を強化していくことが、高齢者の人権を守る対策となるのではないでしょうか。