No.27 介護の法律 ~高齢者虐待防止法編~
超高齢化の現代社会において、高齢者に対する虐待は年々増加し問題化しています。虐待問題は、在宅でもなかなか気づくのが難しい側面があり、発見が遅れてしまうケースが少なくありません。
今回は、介護の法律「在宅での虐待の実態と問題点」について考えてみましょう。
高齢者虐待防止法
2006年に「高齢者に対する虐待防止法」が施行されました。この法律は、年々増加していく高齢者への虐待を防止するため、国や地方公共団体などに監督・指導の権限を与えて医療機関・福祉施設・介護施設が法令を遵守するように責務を与えました。
この法律では、虐待を発見した場合は、速やかに市町村に通報する努力義務があり在宅や介護施設・病院・保健所・医師・保健師などは虐待の早期発見に努めなければいけません。
虐待の実態と種類
在宅介護の場合、2016年度の虐待件数は通報や相談件数約2万8,000件に対して虐待と判断されたのは1万6,000件を超えていました。
一方施設介護職員では、通報や相談件数約17,000件に対して約450件が虐待と判断されました。
具体的な虐待の種類と例については下記となります。
◎身体的虐待
- 高齢者を殴ったり蹴ったり平手打ちなどの暴力行為をする。
- 車いすやベッドに身体拘束や抑制を行う行為をする。
◎性的虐待
- わざと下半身などを裸にして放置する。
- わいせつ行為を強要する。
◎心理的虐待
- 威圧的な態度や言動や脅しや侮辱的な言葉で精神的に苦痛を与える。
- 無視や嫌がらせをして情緒的苦痛を与える。
◎経済的虐待
- 本人が日常的に使用する金銭を使わせない、または制限する。
- 本人の年金や預貯金を無断で使用する。
- 本人の財産を無断で使用したり、不動産の無断での売却などを行う。
◎ネグレクト(介護や世話の放棄・放任)
- 食事・水分補給を定期的に行うことがなく栄養失調症、脱水症状がみられる。
- 入浴せずに異臭がする状態のままである。
以上のことから分かるように、介護の法律の1つ「高齢者虐待防止法」を理解することで、介護の現場で「虐待に繋がるような問題」が起きた際に適切な対処(早期発見)が可能です。
例えば、住宅での介護をすることになった際には大きなストレスがかかるものです。もどかしい思いから、むやみに叱りつける=心理的虐待になることも考えられます。
その後、毎日の介護で疲労が蓄積していき身体的虐待に繋がる可能性もあります。
介護の法律は、このような負担を理解するためにも知っておくことが必要です。一番大切なことは、介護者を孤立させないようにして親戚・地域の住民などが訪問する環境が望ましいです。
介護する者であれば、介護者のためにも自身のストレス軽減のためにも、介護を相談できる人に話をすることが解決策に繋がっていきます。