No.174 介護士として知っておきたい、業務中の事故に関する保険
身体の不自由な方へのケアやサポートに従事する介護士。その職務中には、不測の事故が発生し利用者様にケガを負わせてしまう事態も想定されることでしょう。このような場合の保証となる保険は、どのような形で設けられているのでしょうか。確認していきたいと思います。
リスクが内在する介護士業務
介護士としての役割。それは、心身の不自由な方々に対して、日々の生活・動作・行動についてケアやサポートを実施するところがメインとなります。入居施設、デイサービス、訪問介護などと言った介護現場にて、介護職の国家資格である介護福祉士を中心に、複数の介護スタッフで職務に従事する形式が基本です。
介護職の役割は、副次的な業務を含めれば多岐に及びます。その中で、利用者である要介護者の方々に直接、接する支援の内容としては、大きく分けて身体介護と生活援助の2通りが挙げられます。
身体介護とは、食事・入浴・排泄など、日常生活において欠かせない行動の際に、動作に関わる補助のことを指します。生活援助は、掃除・洗濯・食事の用意などといった家事全般に相当する支援のことを意味します。
これら身体介護や生活援助のような利用者様と直接触れる機会のある業務には、思わぬ事故を引き起こしてしまう危険性が潜んでいます。例としては、身体介護に伴う移乗の際に誤って利用者様を転倒させてしまう、少々目を離した隙に誤って異物等を飲み込んでしまう誤嚥が起きてしまう、などが挙げられるでしょう。そのような事態を招いてしまわないよう、注意を払って業務に臨むべきと言えます。
損害賠償保険は雇用側が加入するのが一般的
しかし、いくら気を付けていたとしても、不測の事故が発生してしまうリスクからは逃れられません。万が一、業務上の事故やミスで利用者様にケガなどの危害が及んでしまい、それに関して損害賠償責任に問われてしまった場合、どのように対応することになるのでしょうか?
このような、介護業務に伴う事故に関して損害賠償保険が設けられており、介護施設を運営する企業は概ねその保険に加入しているのが一般的です。企業の従業員に位置付けられる介護職員の作業ミスにより賠償請求が発生した場合、雇用主である企業に責任が及びます。
法律的に、報償責任の法理という概念が存在し、それを反映して民法において使用者責任の条項が定められています。そのため、業務に関する失敗によって生じた損害賠償は、介護施設を経営している企業が保険によって担う形式が、一般的には取られています。
介護職員個人に損害賠償請求が及ぶことはないのか?
一方で、仮に介護職員の注意が極めて足りなかったなど、高い度合いの過失があった場合、当事者である介護職員にも相応の賠償額を負担が課せられる恐れがあります。また、事故が故意に引き起こされた悪質なケースでは、介護施設は責任を問われず、全ての責任が当事者個人に課せられる場合もあります。
悪質なケースは論外として、介護職員個人に賠償が課せられるケースは稀と考えて宜しいでしょう。しかし、過失性が高いと誤解されてしまうなど、万が一の事態となれば、個人に賠償責任が生じかねません。それに備えて、介護職員が個人で損害賠償保険に加入しておくという方法もあります。
個人向けの損害賠償保険は、オプション等を一切付けない内容であれば月々250~300円で利用可能です。どうしても不安という介護職の方は、加入を検討しても宜しいのではないかと思われます。
- ■まとめ
- 以上のように、介護職員の仕事内容に関して振り返りながら、業務中不測の事態が発生した際に備えた損害賠償保険について見てまいりました。基本的に、保険は介護施設側が加入するものであり、介護職員側に大きな落ち度がない限り、個人に賠償請求が及ぶのは稀です。利用者様の安全を常に心がけて介護に従事していれば、賠償請求に関してとくに心配する必要はないでしょう。