No.136 介護士が経管栄養を行い違法になる場合について
経管栄養は医療行為のため介護士が行うことは違法でしたが、2012年4月の社会福祉法及び介護福祉法の一部改正によって、研修を受講して条件を満たしている介護士であれば実施することが認められるようになりました。今回は経管栄養について説明していきます。
経管栄養とは
病気や筋力の衰えが原因で、嚥下機能が低下し自力で食べ物や飲み物を摂取することが困難な人が生きていくために、チューブまたはカテーテルを用いて人工的に体内に栄養剤を運び込む方法のことです。研修を受講し資格を取得した介護士は、胃ろう・腸ろう・経鼻の3種の経管栄養を介護施設の利用者に実施することが出来ます。
- ◎胃ろうについて
- 胃ろうは、体外固定版(ボタン型とチューブ型)・胃内固定版(バンパー型とバルーン型)・カテーテルの3種から構成されていて、切開手術で開けた胃の穴に直接栄養剤を送り込む方法です。
- ◎腸ろうについて
- 腸ろうは、栄養剤が逆流しにくいというメリットで知られている方法で、切除手術や病気などで胃の機能が使えない場合に用いられています。腸ろうの注意点として、カテーテルの形状が細くなっているため、栄養剤がスムーズに流れず詰まりやすい場合があります。
- ◎経鼻経管栄養について
- 経鼻経管栄養は、鼻からチューブを入れて栄養剤を注入する方法です。これは、嚥下機能の障害の症状が軽い方に用いられていますが、不快感・苦痛を感じてしまいます。そのため、認知症患者や感情を上手くコントロール出来ない方の場合は自分で引き抜いてしまう恐れがあるので、介護士が定期的に様子を見る必要があります。
介護士が経管栄養を行うための必須条件について
必須条件は3つあります。1つ目は「喀痰吸引等研修(第1号~3号)を修了していること」、2つ目は「認定特定行為業務従事者の認定証を取得した方」、3つ目は「勤務している施設が登録事業者に登録済みであること」です。
この3つの条件全てを満たせば、介護士でも経管栄養を実施することが出来るようになります。いずれか1つでも満たしていない場合に実施すると、医師法に違反したことになってしまうので気を付けましょう。
- ◎喀痰吸引等の研修を実施している機関について
- 喀痰吸引等研修および認定証の交付申請などは、お住まいの都道府県で行えます。研修を受講することを検討されている方は、各都道府県にお問い合わせするか、お住まいの登録研修機関をインターネットで検索してみて下さい。
- ◎研修にかかる日数と費用について
- 喀痰吸引等研修には、約8日~10日かかります。そして費用は、約8万円となっていて、教育訓練給付金の対象となっている研修を受講した場合には、最大で10万円まで支給されることになっています。対象者かどうか確認するには、ハローワークへお問い合わせ下さい。
経管栄養の手順について
まず、利用者の体調と医療従事者からの行為をする際の注意事項を確認します。実施する前には、手洗い・除菌を忘れずに行って下さい。準備が整ったら、利用者に了承を取り、体位を調整して実際に栄養剤を送り込んでいきます。実施中は利用者の様子(体調の変化や栄養剤の漏れなど)をしっかりと観察して下さい。それから、処置後は記録を残しておきましょう。
- ■まとめ
- 経管栄養は医療行為です。そのため、先ほど説明した3つの条件を満たしていない介護士は実施することは出来ません。介護施設でも経管栄養を必要としている利用者が増えているので、喀痰吸引等研修の受講を検討してみるのも良いでしょう。