No.135 介護士に許される医療行為の範囲
高齢者を介護する現場では、以前から医療行為とされている行為も求められる場面があり、度々問題視されていました。しかし、介護職はあくまで介護職であり、原則として、医療行為をする事は許されていません。介護現場で行って良い事と行ってはいけない事、その曖昧な境界線を無くす事の重要性は誰もが感じていたはずです。今回は介護士に許される医療行為の範囲について解説します。
医療行為の始め
それまで医療行為とされてきた幾つかの行為を介護士がする事が許されるようになったのは、2012年とごく最近の事です。これにより、介護現場で行える行為の基準が明確にされました。具体的にはどのようなことが可能となったのでしょうか?次に挙げる行為は、現在は医療行為に該当しないものとして、介護士及び介護施設職員に許されています。
- 服薬介助
- 軟膏塗布(床ずれの処置は除く)
- 湿布を貼る
- 座薬を挿入する
- 目薬を差す
- 酸素濃度測定器の装着
- 自動血圧測定器による血圧測定
- 体温計で体温測定
- 軽度の擦り傷及び切り傷の手当は介護士でも行う事が出来ます。
介護士や職員にも行える医療行為とされているものがあります。
- 爪切り
- 爪やすり
- ストーマのパウチに溜まった排泄物除去
- 体位の保持
- 歯ブラシ綿棒による口腔ケア
- 市販浣腸器による浣腸
- 自己導尿補助
- 耳垢を取る
- カテーテルの準備
これらは、要介護者に異常が見受けられない場合にのみ許可されています。
喀痰吸引と経管栄養は医療行為ですが、介護士もできるようになりました
この施術が行えるようになるためには、喀痰吸引等研修を受ける必要があります。この研修は、基本研修と実地研修の両方を終了して、主治医の指示や看護師の連携のもと喀痰吸引と経管栄養が実施できます。
喀痰吸引とは、自力で痰を排出することが難しい利用者の痰を除去して、呼吸をしやすくすることや誤嚥を防ぐことです。
経管栄養は、栄養を口から食べることが困難なために胃や腸などの消化器官内にチューブを挿入している利用者へ栄養を送り、栄養を摂取して頂くことを言います。
禁じられている医療行為
法改正によって、一部の医療行為に限り、介護施設で行う事が法改正によって認められた介護士ですが、介護士は医療従事者ではありません。原則的には医療に関わる行為は禁止されています。その行為には、摘便・床ずれの処置・インスリン注射・血糖測定・点滴の管理などが該当します。
現在介護を必要とする人は非常に多くいるという現状がありますが、例えばインスリン注射などを医療世界のものとして認識していない利用者や家族も多くいます。しかし医療従事者ではない介護士がこれらの事を行うと、1歩間違えば重大な医療ミスに繋がる可能性があります。
実際、法律で認められていない医療行為を介護士が行って、書類送検される事例もあるので、認められることを事前に確認しましょう。(介護現場の施設による取り決めもあり)
- ■まとめ
- 今回は、介護士が介護現場で求められている医療行為についてお伝えしました。介護士は正しい知識と技術を身につけて、何ができて何ができないのかをしっかり把握する必要があります。