No.52 介護業界の人手不足の現状と対策
日本はここ数年、IT産業・飲食業・サービス業など多くの職種や企業が人手不足の問題に直面しています。介護業界もまた、例外ではありません。求人を出しても人材が集まらない現状が続いています。今回は、介護業界の人手不足の現状について考察してみましょう。
介護業界の現状
厚労省の2018年介護保険第7期の発表では、介護職員の需要と供給のギャップは、年々乖離しています。この予想推移で行くと、2025年には介護職員の必要数約245万人に対して、介護職員として確保できる人数は211万人と、受給バランスからみて34万人もの介護士が不足するとの厳しい推計が出ています。必要な介護職員の需給を満たすには、毎年6万人の確保が必要となってきますが、とても難しい現状があります。
人手不足の原因とは?
介護業界は慢性的な人手不足です。では、何が原因でしょうか?下記に主な要因を並べてみました。
①少子高齢化で働き手が少ない
1995年を境に、生産年齢人口(15歳から64歳まで)が減少に転じました。これに対して2015年には日本の高齢者(65歳以上)は3,395万人、2025年には3,657万人と総人口に占める割合は30.3%になると厚生労働省の推計が出ています。これは、人口の約3人に1人は、高齢者ということになります。
②離職率が高い
介護職員の離職率の高さが問題となっています。やっと介護業界に就職しても、約73%が勤続3年未満で離職しています。特に待遇面で安定している大規模事業所に比べて、小規模事業所の方が離職率が高い傾向にあります。
③休みが取りにくい
ほとんどの介護事業所は、人手不足のため休みが取りにくい現状があります。そのため疲弊して、介護職員は仕事に対するモチベーションも落ちてきます。
人手不足に向けた国の対策
◎再就職準備金貸付制度
介護職を離職した人が再就職する際に、20万円(地域によって上限金額が異なる)を上限として就職に必要な準備金を貸付する制度です。介護職として2年間働くことで、貸付金の返済が免除されます。
◎就学資金貸付制度
介護福祉士を目指す学生に対しての奨学金で、介護福祉士養成校などに通学している学生に対して、毎月5万円、入学時と卒業に20万円の貸付けを行う制度です。介護福祉士の国家資格を取得した後、介護職として5年間働くことで貸付金の返済が免除されます。
今年の4月からは、入管法を改正し外国人の技能実習生の受け入れを推進して、特定技能実習生として国家資格を取得することで、長期の在留資格や家族の帯同もできるような法律改正がありました。さらに今年の10月から、勤続10年の介護福祉士には月額8万円相当の処遇改善手当が予定されています。
- ■まとめ
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今回は、介護業界の人手不足の現状と対策についてみてきましたが、今後、高齢者の増加に介護職員の供給が間に合わない需要と供給のミスマッチが続いています。介護職不足の解消に向けて、国の早急な対策が急務になっています。