No.77 介護技術~適切なポジショニング~
身体を自由に動かせない人は、身体の一部に大きな負担が課せられてしまう傾向があります。体重が集中し皮膚組織が圧迫され、血流が滞ることで様々な症状が現れます。そのため、介護においてポジショニングは大切なことです。
体を安楽に保つポジショニング
高齢者になるとベッドの中で過ごす時間が多くなったり、寝たきりになったりすることがあります。それによって、起こる様々な症状を緩和するためにも、介護対策としてポジショニングという介助方法があります。
人がバランスや動こうとする力をプラスに活かせる環境作りをして、姿勢を理解しすでに起きている問題やこれから起こりうる問題(予測や予防)と、それに対してのマイナス要因を明確化していきます。その結果、部分的な問題解決だけではなく、より多面的で継続的なサポートができるようになります。
ポジショニングを行うことの目的として、下記のようなことが上げられます。
○快適な姿勢を作る
○関節拘縮の緩和をする
○床ずれ(褥瘡)を防止する
○食事や呼吸がしやすくなる
○リラックスする
○しっかり排泄できる
身体への影響から起こる状態
身体は頭、胸郭、骨盤、両腕、両足という大きな部位がバランスを取って、筋肉により姿勢を保っています。そのバランスが保てなくなって動かせなくなると、大きな重圧によって自らでは感じない影響が身体へと重く掛かっています。
動けないことで一点に重圧が長時間掛けられ、体にとって苦しい体勢となってしまうこともあります。よく知られている身体への影響として、「床ずれ(褥瘡)」や「拘縮」等が上げられます。
○床ずれ(褥瘡):ベッド上や椅子等と接触する部分の皮膚が、長時間圧迫され血流が悪化し、皮膚や皮下組織、筋肉等へ酸素や栄養が行き渡らなくなり、死んでしまった状態になることを言います。
○拘縮:関節が曲がりにくくなってしまうことを言いますが、一般的には怪我や病気等の原因により、長期間身体を動かしていない状態が継続することで関節が硬くなり、動きが悪化してしまうようなことを言います。また、脳梗塞による片麻痺でも起こる状態です。
ベッドでのポジショニング
車椅子やベッド等、身体と接触している箇所に体重や摩擦等がかかります。そのため、圧迫されている部位を変更する必要があります。
・身体が向いている方向を仰臥位(上を向いて寝た状態)、側臥位(横を向いて寝た状態)が交互になるようにしましょう。
・頭部はクッション等を使い、重さがかかっているところまで敷き込みましょう。それによって、首と胸部全体で支えることができます。
・マットレス(福祉道具)等を使用し、体に圧が掛かる影響力を最低限に抑えていくような方法等があります。
- ■まとめ
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同一姿勢や同じ場所に圧がかかることによって、浮腫や床ずれ・拘縮等の症状が出たりします。それらの改善や状態の維持、予防のためにも介護におけるポジショニングはとても大切です。生活面において、摂食や嚥下、呼吸等身体機能の活性化にも影響を与えるのです。