No.183 介護士の労働環境の改善で人手不足を解消できるのか?
過酷な労働とイメージされがちな介護士の仕事ですが、そのイメージ通りの要因で慢性的な人手不足となっているとも言えるでしょう。この記事では、介護士の労働環境の実態と主な退職理由を通して、介護現場の人手不足を解消するヒントを紹介します。
労働環境の実態
超高齢化・少子化の影響で労働人口が減少する現代。経済産業省によると、団塊の世代の方が85歳以上となる2035年には、79万人の介護職員不足が想定されています。国の介護保険制度の導入で民間介護施設が増えたものの、そこで働く人材が十分に確保できていないのが現状です。
大きな要因は、過酷な労働というネガティブなイメージが強い事と言えます。それを払拭するため、介護業界のHPや求人広告には、ポジティブな情報を発信するものが増えています。
また、実際の現場では事務作業を削減するためのペーパーレス化や、ITサービス導入で職員の負担軽減を図っているのです。
それだけでなく、介護者のストレスが抑えられる手法のユニットケアを導入するなど、労働環境の整備で離職率を下げるように工夫されています。さらに、近年では外国人の雇用が進み、政府による技能実習制度・EPAなどが導入されています。
政府側でもイメージアップを図るために、勤続10年以上になる介護福祉士の平均月収を8万円程度、処遇改善すると発表しました。これは、介護福祉士の勤続年数が平均6年程度である事を受け、キャリアアップを評価して介護職員の長い勤続を目指すものです。
主な退職理由
令和2年度の介護労働安定センターによる実態調査によると、最も多かった介護士の退職理由は「将来の見込が立たないため」で26.9%の割合でした。この退職理由は1位ですが投票は男性が多く、女性ではランク外です。
次に多いのが「人間関係によるストレス」でした。残業が続いて体調を崩した際の急な休みは、日々の業務に多大な影響を及ぼし、他の職員から不満が出る事もあります。職員同士のコミュニケーション不足による職場環境の悪化が、ストレス要因となっています。
次いで多かったのは「結婚や出産に伴う理由」と、「勤務体制や労働時間などへの不満」となっています。
介護職を続ける理由
厚生労働省の調査によると介護職に従事している現職の方は、下記のような部分に魅力を感じ、充実感を得ているという結果が分かっています。
- ●勤務時間や休暇などの働き方において43.3%の満足度
- ●続いて職場の人間関係、雰囲気などに対しての満足度が36.8%
このように、職場環境や労働環境を改善すれば、さらに退職率が下がると言っても過言ではありません。
近年ではIoT(アイオーティー)機器などの技術進歩によって、見守りロボットが入居者の健康状態を数値化するようになっています。特に、夜間の見回りが削減でき、且つ重大事故の発生も抑えられるため、職員の負担が軽減されます。ネガティブイメージの払拭につながると言えるでしょう。
また、給与アップにもつながる資格取得など、職員のスキルアップを支援する事業所もあります。そう言った労働環境を整えられている職場なら、長く務める事が出来るでしょう。
- ■まとめ
- 介護士の仕事は大きな責任を伴うものである事には変わりありませんが、それ以上のやりがいや使命感を感じる事の出来る仕事です。今後、労働環境の改善で離職率を下がれば、人手不足の解消にもつながると言えるでしょう。
- 環境を改善できない場合は、思い切った転職をおすすめします。労働環境の良い、新しい職場で「誇り」を持って再出発し、長く介護士を続けられる事を期待します。