No.164 医療行為と介護士の関係とは
介護士は業務の中で利用者の介護を中心に、生活の自立支援や介助を行います。しかし、これらは医療行為になるのではと疑問を抱く方もいます。介護士が行っても良い医療行為と認められていない医療行為等、医療行為と介護士の関係について詳しく解説します。
介護士と医療行為
前提として介護士は医療従事者ではないので、医療行為のほとんどが認められていません。しかし、現場では医療行為と似たような処置が求められることがあります。下記の行為は医療行為として見做されていないので、利用者の体調や病状が安定している場合にのみ行う事ができます。
- ●自動血圧測定器を使用した血圧の測定
- ●体温計を使用した体温の測定
- ●パルスオキシメータ装着(入院治療が不必要な場合のみOK)
- ●軽い火傷や傷の処置(専門的な技術や判断を必要としない場合のみOK)
- ●医薬品を使用する際の介助(湿布を貼る、軟膏を塗る、目薬の点眼等)
医療行為と認定されているものでも、下記の医療行為は介護士が行う事ができる医療行為です。ただし専門的なマネジメントが必要と判断される場合は、医師・歯科医師・看護師へ確認・報告しなければならないので注意が必要です。
- ●口腔内のケア(歯周病などの異常がある場合はNG)
- ●爪を切る(糖尿病などの疾患があり、爪やその周辺の皮膚に異常がある場合はNG)
- ●耳の掃除(耳垢栓塞の除去はNG)
- ●体位保持やカテーテルの準備
- ●ストーマのパウチにたまった排泄物を除去
- ●市販の浣腸による浣腸処置(規程がある)
条件付きで介護福祉士だけが行える医療行為
介護福祉士の資格取得者だけが行える医療行為として、「喀痰吸引」と「経管栄養」があります。「喀痰吸引」とは、利用者が呼吸しやすいように定期的に痰を取り除く行為を指します。「経管栄養」とは、カテーテルなどを用いて栄養を直接体内に挿入する行為をいいます。
介護福祉士は国家試験の受験要件として実務者研修を修了する必要があり、実務者研修では上記の2つの医療行為について学びます。このためこれらの医療行為は、実務者研修を修了した介護福祉士のみが行う事が許可されています。
ただし、介護福祉士の資格を持っているだけでは、これらの医療行為は許可されません。利用者やその家族の同意が必要であり、医師や看護師と連携して医療者による監修のもとでのみ行う事ができます。これらの条件を全て満たさないと行う事が認められないので注意が必要です。
介護士ができない医療行為
上記のように一部の医療行為は、しっかりとした研修と資格を保有した介護福祉士であれば行う事ができます。しかしながら下記の医療行為は、介護士が行って良いとよく勘違いされています。勘違いで処置を施して利用者に万が一の場合があれば、責任は重大なものとなります。
- ●点滴の管理
- ●血糖値の測定
- ●インスリン注射
- ●床ずれ処置
- ●摘便
これらの医療行為は介護士が行う事が認められていません。処置等が必要な場合は、看護師や医師に処置して頂く必要があります。認められていない医療行為を介護士が処置すると、重大な違反となり厳しく罰せられるので絶対に行ってはいけません。
- ■まとめ
- 医療行為として介護士が認められていることもありますが、ほとんどは禁止されています。また、介護福祉士でも特定の条件下でしか行えない医療行為もあります。介護従事者として正しい知識を身に付け、利用者やその家族が安心できるように努める事が大切となります。