No.16 行政は介護事業所のチェック機関である
2000年4月より介護保険がスタートしてこれまで19年目になりました。民間でも介護事業所が運営できるようになり、大手の企業が続々と新規参入してきています。増え続ける高齢者を対象に近年、通所介護(デイサービス)が増加してきましたが、さまざまな問題も起きてきています。今回は、どのような「法令・基準」で介護事業所を開設することができ、開設後はどのようなことに気を付けて運営すればよいか解説しましょう。
介護事業所を設立するときの「行政の役割と流れ」とは?
介護事業所を開設するには、市町村への申請が必要ですので下記を参考にしてください。
- 株式会社や合同会社などの法人・NPO・社会福祉法人などの法人格を持っていること
- 人員基準を満たしていること
- 運営基準を満たしていること
この基準を満たした場合に、市町村が介護事業所としての指定が許可されます。
しかし、開所当初は基準を満たしていたが、人員不足などさまざまな理由により「法令で定められた基準が守られていない」ことも多々あります。介護事業所が処分対象となる理由としてはいろいろありますが、一番多いのが不正請求です。
法令違反の対象って?
法令違反の対象については、下記となりますので参考にしてください。
- ・不正請求違反
- サービス実施記録を偽装し、加算や介護報酬を不正に請求して受け取るなどの違反です。
- ・人員基準違反
- 法令で決まった人員不足や、常勤専従でいるべき職員がいない場合などの違反です。また「無資格者」を「有資格者」と偽って配置した場合も違反対象となります。
- ・運営基準違反
- 提供した具体的なサービスの内容(利用者の心身の状況等を記録)の記録内容が不十分だと違反です。また「ケアプランに記載していない内容の計画」をサービス提供した場合に違反対象となります。
- ・一部停止処分
- 一定期間、介護報酬の請求額が30%減額など「決められた期間、新規利用者の受け入れを停止する」などの一部の効力が停止されます。
- ・全部停止処分
- 一定期間「介護保険に関する権利」を行使できなくなり、経営悪化につながります。
- ・指定取り消し処分
- 介護事業所としての指定が取り消されます。本来なら請求できる介護報酬が請求できなくなり事実上の倒産や廃業となります。
違反し処分を科せられる内容については下記となります。
コムスン事件から見えてくる「介護行政のあり方」とは?
訪問介護の最大手のコムスンが、2007年12月~2007年5月にかけて介護報酬の不正請求の疑いがあると、都内187か所の事業所のうち53か所に厚生労働省の立ち入り検査を実施しました。
その結果、約4320万円の介護報酬(過大請求)が発覚しました。2007年6月に厚生労働省は、コムスンに対して介護サービス事業所の「新規・更新」を認めない処分を決定しました。これは、事実上の介護事業からの撤退を意味していたが、親会社であるグッドウィルは、別の子会社に介護事業を譲渡し、違法性のない法の抜け道(グレーゾーン)を利用した方法で別のグループ会社に事業を移しました。
この方法は、国民にとっても納得できることではなく、また、コムスンは厚労省の指導に従わなかったため、ここで「介護事業の倫理上の問題」がでてきます。
さらに、グッドウィル・グループの別系列の介護事業でも障害者サービスの虚偽申請が発覚しました。コムスンの不祥事をきっかけで、グッドウィルへの批判(不正問題)が高まり介護事業から全面撤退することになります。
このように、介護事業所にとって「行政」は、不正を行わないように指導する(チェックする)役目があるといえるのではないでしょうか。
つまり、介護保険の法令をよく理解して遵守すること=「介護報酬の返還処分、報酬の減算、指定取り消し処分にならない」といえます。介護事業のあり方をしっかりと見つめなおすことは介護事業所の経営にとって必要不可欠です。
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