No.125 介護士にできること、できないこと
医療行為は医者、看護師等の医療従事者が行うもので、介護士が医療行為を行う事はできません。しかし、利用者の容体が安定している場合に限り、特例で認められている医療行為もあり「できること」と「できないこと」を細かく紹介します。
介護士とは
現場で介護に携わる方全般を指し、一般的に言われる資格が必要なホームヘルパーや介護福祉士等を指しますが、広い意味では無資格のパート・アルバイトの方も含まれます。
介護職員初任者研修
介護福祉士を目指すためのスタートとも言える資格で、介護の基礎を学び取得するものです。受講の条件は無く誰でも受けられます。修了試験をパスし資格を得ると身体介護ができるようになります。
介護福祉士実務者研修
介護職員初任者研修からさらに応用的な技能を学べます。介護福祉士の受講条件にもなっておりステップアップする方は必ず取る必要があります。
痰の吸引や経管栄養等の医療的行為も行えるようになり、訪問介護事業者のサービス提供責任者につく事ができます。
介護福祉士
介護資格の中では唯一の国家資格で、勤務先は老人ホームやグループホーム、介護療養型ホーム、デイサービス、デイケア等介護施設や訪問介護等の介護職全般につく事ができます。利用者やその家族の応対や相談、提案を行い、現場ではリーダー的な立場になり、ヘルパーや介護職員にアドバイスや指導を行ったりします。
訪問介護において無資格でも身体介護ができるように
介護には主に料理・洗濯、家事等の「生活援助」、食事、入浴、排泄、介助等の身体に直接触れる「身体介護」があり、身体介護の方は介護資格が必要です。
厚生労働省は2020年、資格を持ってない人でも条件付きで身体介護ができる特例の制度を施行しました。新型コロナの影響で事業所が介護ヘルパーを確保できなければ無資格(介護経験のある者に限る)でも身体介護を認めるというものです。
原則、医療行為は認められていない
医療行為に当たるものは医者や看護師、医療従事者が行うもので、原則、介護士は医療行為を認められていません。
利用者の容体が不安定であり、専門的な管理が必要と思われる時は医療行為となる可能性があります。投薬や測定値で医学的な判断を行う事は医療行為に当たります。
以下は医療行為に当たらず介護士が行えます。
- 服薬介助(薬を飲んでいただく介助)
- 軟膏塗布(床ずれの処置は除く)
- 湿布を貼る
- 目薬を差す
- 坐薬を挿入する
- 軽い切り傷や擦り傷の処置
- 体温計での体温測定
- 自動血圧測定器での血圧測定
- 酸素濃度測定器の装着
以下は条件付きで認められている介護士が行える医療行為です。
- 耳垢を取り除く(耳垢が完全に詰まっている場合を除く)
- 爪切り、爪やすり(巻爪、周りの皮膚に炎症等の異常がある場合を除く)
- 歯ブラシ、綿棒による口腔ケア(歯・口腔粘膜・舌)
- ストーマのパウチに溜まった排泄物除去
- 自己導尿補助、カテーテルの準備、体位保持
- 市販の浣腸器(ディスポーザブルグリセリン浣腸器)による浣腸
インスリン注射を打つ事はできる?
インスリン注射は医療行為なので介護士がインスリン注射を打つ事はできません。
ただし、利用者が正しくインスリン注射を打てるように支援する事はできます。
- 医者が指定した時間に正しく打つように事前に声かけをする。
- 利用者がスムーズに血糖値測定ができるよう支援、見守りを行う。
- 測定数値のメモリを一緒に読み上げる。
喀痰吸引と経管栄養
平成24年4月より喀痰吸引等研修を修了した者に限り、痰の吸引や経管栄養を条件付きで介護職員が行えるようになりました。
介護福祉士の資格があっても喀痰吸引等研修を修了していないと喀痰吸引と経管栄養が行えないので注意してください。
都道府県知事から登録を受けた「登録喀痰吸引等事業所」で「喀痰吸引等研修」を受講し修了すると行えるようになります。
- ■まとめ
- 本来は認められていない医療行為でも、目の前で痛がるなどや、どうにかしてとせっつかれると介護をしている身としては心情的に辛いものがあり、ついやってしまいたくなるケースがあるかもしれません。普段から自身ができること、できないことを自覚し、そういったケースが起こらないように防ぐ、起こった時のケースを事前に想定しておき、もし起こってもルールに則った正しい介護を行うようにしましょう。