No.112 介護士の髭剃りについて
介護施設や訪問介護などで介護士が利用者の髭を剃る事は法的に見て果たして適法なのでしょうか?それとも違法なのでしょうか?色々な情報がありますが、はっきりとした答えが浮かび上がってきません。今回は集めた情報をご紹介していきたいと思います。
介護現場での顔剃り・髭剃りの現状
介護現場で、介護士による利用者への顔剃り・髭剃りは普段から行われているのが現状のようです。これには理由があり、まず利用者様が理容室へ行くのが困難な場合もあるでしょうし、介護区分でも身体整容という区分で『日常的な行為としての身体整容』という項目が存在します。
また、利用者の家族様からの要望で髭を剃るように強く言われるケースもあるようです。この場合、介護の現場では髭剃りをしないわけにはいかないのが現状のようです。
法的に見た顔剃り・髭剃りの現状
顔剃り・髭剃りを法的に見てみると、介護保険法の規定ではヒゲ剃りは訪問介護の仕事としても認められているようです。しかし、理容師法の規定では剃刀を使ったヒゲ剃りは、業としては理容師のみが行える行為とされています。
厚生労働省も、次の要望に対する回答で髭剃りは理容師だけが行える行為だとの見解を示しています。
- 【概要】
- 某NPO法人の要望
顔剃り・髭剃りの施術行為は理容師のみに認められた行為であるが、福祉サービスとしての理美容についても、顔剃り・髭剃りを認めてもらいたい。 - 厚生労働省の回答
理容師法では顔剃り・髭剃りを理容師だけに限定しており、理容師免許は厚生労働大臣が指定する養成施設において専門技術を習得し、卒業後、国家試験に合格したものに与えられている。顔剃り等を理容師ではない者が行うことは、仮に場所及び対象者を限定するとしても、これを認めることは困難である。
これらのことから、介護士の顔剃り・髭剃りは法的に認められないということが分かります。しかし、電動髭剃りに関しては規定がないので、介護士が使用しても問題はないようです。また、自治体によっては次のような判断もあるようです。
各自治体の判断
- 【新潟県】
- 利用者に対し、カミソリ(T字カミソリ含む)を使用しての髭剃りは理容師法に違反するおそれがあるため、訪問介護士等が行うことはできない。
~訪問介護に関する新潟県版Q&A~ 令和元年9月 改訂版
- 【兵庫県】
- 訪問介護(介護職員の髭剃り行為)
身体整容の一環として髭剃りは、介護職員がカミソリ(T字カミソリなどを含む)を使用することは可能である。 - (1)老計第10号1-2-5 身体整容(日常的な行為としての身体整容)の中で示されている「髭の手入れ」は、理容師法には当てはまらないと解釈。
(2)そのため、身体整容の一環としてT字カミソリ又は電動髭剃りを使用したサービスを介護職員が行うことは可能である。
このように各自治体によっても判断が変わってきています。
- ■まとめ
- ここまで見てきたように、介護士の顔剃り・髭剃りについては介護現場での実情と法的な制度との間で解離が見られ、また自治体によってもその判断が変わってきています。1つ確実なことを挙げるとすれば、電動髭剃りは使用可能ということ、そして自治体への確認はした方が良いという事ではないでしょうか。